ほうそ流し
 たしか2年生か3年生のころ「種痘]をした。上腕の後側あたりを4つか6つ、メスでちょんちょんと×印を付ける。ちょっと血がにじむ。痛いというほどのものではなかったが、白い手術着姿の医者に腕をつかまれた恐怖は記憶に生々しい。
 しばらくすると×印がかさぶたになり、赤く腫れ上がったり、むず痒くて困ったものだ。友達の中には全く跡形のつかない者もいた。 どのぐらいだったか、「ホーソ流しするぞ」と母に言われた。
 まず尻の下に「バセ(米俵用のサンダフラと同じ)」を敷き、頭の上にもう一つ「バセ」を載せる。笹の葉に水をつけ、頭の上で振ってもらう。肩先や膝にも水滴が少しかかる。それがほうそ流しだ。終わると「バセ」を2つ合わせて山道の藪にくくりつける。「あ、だれかもホーソ流しやったな」と「バセ」の吊り下がっている数で判断できた。
 こういう「おまじない」をしないと本物の天然痘になるのだそうだ。
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