かいこ(蚕)
 夏休みが始まるころ、夏蚕はちょうどニワオキにかかる。ニワオキとは四眠(ニワヤスミ)が終わり五齢になること。蚕は五齢になると1週間ほどで上蔟する(マユを作る)。この五齢の時が幼虫時代で最も大きくなる時なので、日増しに食糧とする桑の量が多くいるようになる。養蚕で最多忙の時だちょうどこのころ運がいい(悪い?)のか夏休みになる。待ってましたとばかりにさっそく桑摘み要員として働くことになる。
 「露」は禁物、さりとて乾燥させてもいけない。1葉ずつ桑の下葉だけを摘み採る(上葉は秋蚕のために残す)。夏の陽に照らされ、草いきれにムッとする中で桑摘みを続けなければならなかった。
 1日5回の給桑、毎日のこじりとり。茶の間も座敷も、家中が蚕に占領され、寝るのも蚕棚の下だ。まさに「お蚕サマ」だった。約1週間後、「トビがみえた」と父の声(トビとはマユを作るため蚕が桑を食うのをやめ、首のあたりが淡黄色に透きとおってくること。その最も早いものをいう)。トビが見えるとその翌日は一斉に上がる(上蔟する)ので桑摘みはいらなくなる。嫌々ながらの桑摘みから解放されるので、この時はほんとうに束の間の喜びである。翌日はまたまた忙しい上蔟の作業なのだ。人頼みで戦場のような忙しさだ。
 1匹ずつヒキだもの(首の透き通ったもの)を拾い、マユを作らせるためマブシの中へ入れる仕事だ。食事の暇もないほどの1日が続き、夕方ごろにはもう蔟には白いマユが見える。ほっとしたものだ。夏休みイコール蚕飼いの休み、今でもそう思っている。
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