つぼいさ
 「こんにはー」
 「ヘいまいど」どさっと缶を背中からおろす。
 「あっ、つぼいさだ」ぼくたちは遊びをやめて、あわてて上りロヘいく。魚の匂いにぼくたちは缶の中を覗く。毎日田口から古海へ1里余の山道を魚を背負って商い。坪井商店の若且那だ。
 「きょうは何だね]「へえ、ますのしょうびき、きりいか、こんにやく、ちくわ……」ひからびたような小型のますがぎっしり詰まっている。「それ1尾」「へえ……」竿秤の分銅を器用にずらしながら「へえ○匁。えーと○銭だ」。
 田植えが終わった時は「生サバ」。年に1回のごちそう。年取りには赤いおととの鮭。そのほか今日のように「マス」でも買うのは余程の時だけだった。
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