乞  食
 ほとんど3日に1度くらいは乞食(ものごい)が村の中を歩いていた。
 おげん(女)、ター公、おくれっこじきなどと名のついた常連から、ほかにも初めて見る顔の者が、代わる代わる戸毎に訪ねて来た。ター公は浪花節まがいのことを言うのですぐ分かる。怖いのはおくれっこじきだ。このこじきは戸間口へきて、「おくれ!! おくれ!!」と大声で言うだけだ。
 怖いもの見たさにぼくたちは物珍しそうに後からついて歩いたり、影からのぞいてその仕草を真似したりしたものだ。見え隠れに一団となってつきまとうぼくたちに気付いたのか、時には急に立ち止まって振り向くこともあり、そんな時には狼にでも狙われたようなそら恐ろしい気分だった。
 それにしても、よくまああんなボロ着をまとっていたものだなあ。
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