よろり(囲炉裏)
 障子紙1枚。隙間の多い板戸。冬の夜はしんしんと寒い。寒さは昔も今も変わらない。囲炉裏のたき火は唯一の暖戻設備でもある。朝から「とっこ」といって雑木の根っこの部分や節くれだって薪に割れないものをそのまま焚物としてくべておく。よく乾燥しているとあまり煙も出ないで少しずつ燃えていく。その代わりほこりも多いし、なにしろたき火なので室の空気もにごるが、寒さを防ぐにはこれよりほかにどうしようもない。鍋は「5升ナベ]という特大の鉄製。「ヒエ」などを煮て馬の餌にする。ただ火を燃すのはもったないということからカギつけ(自在カギ)にはいつでも鉄ビンなり鍋をかけておく。横座は家長の席(敷物を横にするので正面だがその名がある)。横座からみて左右側か客座。向かいが木尻といって主婦の座と決まっていた。
 コウジンサマが「囲炉裏の神としておいでになる]とよく言われ、やたらに足を入れたり、ごみを捨てるとバチが当たるとされていた。電灯も1つ。客間、居間、勉強部屋、子ども部屋を兼ね、なんでもかんでもこの囲炉裏のある茶の間が、日常の家族生活の中心の場所だ。子どもながらおとなの話に耳を傾けたり、一家の経済のこと、村の出来事など、一切がっさいの情報交換広場であり、子どもはおとなの仕事を覚え、おとなは子どもの養育、躾を身をもって範を示してくれていたところでもある。
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