伝承復活の記録

 長野農業改良普及所長 尾崎  誠

 

 このたび、むらの味おこしに先導的役割りを担い、豊富な実績をもたれる信濃町生活改善グループの皆さんが、″いまやっておかねぱならないこと″として「郷土食」を刊行されたことに対し、心から敬意を表します。
 さて、世相の変化の中で、食生活にもすざましい変化がみられます。都会では三度の食事ということが理解できなくなっている子供たち、包丁、マナイタが不用になった主婦たちも確実に増えているといわれます。
 街にいくらもあるレストラソや高級加工食品店がこの人たちの食生活様式を大きく変化させ、いまや生活様式の洋風化と相俟って、農村・農家の食生活までも急ピッチで都市型に接近しています。
 私たちの食事は、単に食物に含まれる栄養素とその組合せだけで十分とはいえません。安全性が確保されているだけでも不十分です。貯蔵性があること、便利であること、経済的であることも必要です。そして食事のおいしいこと、楽しいことなどのためには、料理のしかた、食べ方の習慣など広く食の文化とされるものも大切です。
 私たちはこれまで四季折々に、地域それぞれの産物を利用し、調理に工夫をこらし、季節や地域の味覚を楽しんで「目には青葉山ほととぎす初かつお」の生活を堪能してきました。
 ところで、このような、いわゆるむらの食事、地域の自然と先人の知恵とによって生み出された伝統的食事が次第に忘れられ、永久に失なわれようとしています。残したいものがつぎつぎと消されていく現実を憂い、生活改善グループの皆さんが記録にとどめるしか保存できないとし、むらに伝わる食事を記録されたことは、誠に時宜を得たもので、広く賞賛されましょう。伝承復活の動機となることを期待し、お祝い中し上げます。

おくらぶち もくじ